ぶみこ

ロングロングアゴー
私にも幼少期があった。

これは、あたしが4歳ぐらいのときのお話。

あたしの家の後ろに、フミコちゃんといい、子供ながらにちょっと変わった
こけしみたいな顔の女の子が住んでいた。

このフミコちゃんは感受性が高く、何かに夢中になると周りが見えなくなる。
その為、あたしはちょいちょい被害を被った。

例えば・・・
3歳上のお兄ちゃんとあたしが、家の周りの塀の上で遊んでいるとき、
あたしがたまたま足を滑らせ塀から落下してしまった。
そこに、買ってもらったばかりの補助輪付きの自転車を、
一心不乱にこいでいるフミコちゃんが通りかかった。

『じょーこちゃぁんっ』
(注 フミコちゃんは舌っ足らずなので、りょうこ の発音が苦手だった)

落下したあたしの心配をして自転車で駆け寄ってくるとは、なんともありがたい。

しかし、実際は違かった・・・
フミコちゃんの興味の全ては新しい自転車にそそがれていたため、あたしの落下は
興味がないようで、そのまま補助輪つきの自転車であたしの腕を轢いて、走り去った・・・
落下の痛さよりも、車輪の痛さが残った(泣)

しかし、これはまだ序の口。
ある日、フミコちゃんが大事に育てていた金魚の『きんこう』が死んでしまった。
(名前の由来はフミコちゃんの大好きな遠山の金さんからきている)

フミコちゃんは1週間ぐらい元気がなかった。
ある日、あたしを誘いにきた。
やっと遊ぶ元気がでてきたのだと思い、あたしは嬉しくなりフミコちゃんの家にいった。
すると、フミコちゃんが、
『じょーこちゃん、あたしね、もう一回きんこうにお別れをいいたいの』
と、お庭にあたしを連れて行った。そこにはきんこうのお墓があった。
『そうだね、きんこうにお別れを言おうっ』
あたしもお墓のまえに座り、手をあわせた。南無~
『違うよ、じょーこちゃんっ』
へっ??
フミコちゃんは砂場から、スコップをもってきた。
そして、
『きんこうをもう一回見たいのっ』
えぇぇぇえっ!?
あまりの驚きでフリーズしているあたしをよそに、フミコちゃんは
もくもくとお墓を掘り始めた。

少しすると、
『ひゃぁっ!! じょーこちゃんっ』
と、フミコちゃんはスコップを投出したっ
あたしは、恐る恐る穴の中を覗いた・・・・・・

見るんじゃなかった、そこにはきんこうの姿はなく
無数の白いうねうねする虫がいたっ
生まれてはじめてウジ虫を見たあたしは、パニックになったっ
すごい速さで、穴に土を戻し、もう絶対掘り返さないことを
フミコちゃんに約束をさせた。
『帰るねっ』
早く、その場から立ち去りたかった。

フミコちゃんは、お庭のポーチまで見送ってくれた。
『じゃあね、じょーこちゃん、このことはお母さんには内緒にしてね』
と言い、ポーチの戸を閉めた。
キィィィィッ
そこにはあたしの指があるのに・・・・(痛)

痛かったっ!!右手の薬指を思いっきり挟まれていたっ!!
しかし、案の定フミコちゃんは気づいていない。
もう一回、念を押すように
『お母さんには内緒だよっ』
と言って家に入っていった。
指を挟まれたまま取り残されたあたしは思った。


明日から、フミコちゃんを『ブミコ』と呼ぼうっ



あたくしごとで、すみません。

※その後、薬指の爪を剥がすことになった・・・




←きんこう

2 件のコメント:

  1. 「じょーこちゃぁんっ」で耐えられませんでした。
    何となく、顔が想像できてしまう。
    すごい破壊力です・・・。

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  2. あたしは、このときのまんま大人になりましたが、ブミコちゃんはその後どうなったんだろう・・・?

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