サイドバックドック

あたしのお店の前は毎日いろんな人が通ります。
外でタバコを吸いがてら、人間ウォッチングも楽しみのひとつ。
夏の間ずーっと気になったおじさん。
いでたちは、ロングな白髪にロングなあごい鬚(こちらも白い)、
ショートパンツに衿のびろびろに伸びたのランニング、サンダル、
遠い目・・・・・
一見 浮浪者にも見えるこのおじさんの小脇には、
高貴な高貴な真っ白なマルチーズ犬が収まっている。
しかし、このマルチーズ 微動だにしない。
犬の散歩っていうか、おじさんの散歩・・・・
いつしか思った、
あのマルチーズはマルチーズ型サイドバックなのでは・・・?!
背中にチャックがあるか、近づいて確かめてみようと思っていた
ある日、
おじさんに話しかけられたっ


「そこのお店の人でしょ?」
(やばい、毎日じろじろ見てたのを怒られるっ)
「はい、そーです」

「いいもの置いてるよねー」
(わあ、まず褒めてから叱ってくるパターンだ)
「あ、ありがとうございます・・」

「ところで」
(きたっ)
「すごい儲かってるんでしょ?!」
(えっ??)
「い、いやぁ・・・」

「おじさんね、海外にマンションいくつも持ってるんだけど、一個買わない?」
(はっ??絶対うそだっ)
「はっ??」
「海外飛び回ってるとこいつが寂しがるんだよねぇ」
と、マルチーズを撫でた。相変わらずマルチーズは微動だにしないが、
サイドバックではなく、ペットということは確認できた。
瞬きもしたので生きているらしい。
おじさんは、あたしの返答を待たずに一方的に話し始めた。

「こいつかわいいでしょっ アーケードでは歩かせてんのっ」
(なぜ?)
「女子高生ナンパすんのにさっ いいんだよねぇぇ」
マルチーズを餌に女子高生をナンパとは、新しいマルチ商法か・・・


ある日、この残念なおじさんの目撃情報が常連のYっちからはいった、
「さっき、あのおじさん街で見かけたよ」
「マジで?女子高生ナンパしてた?」
「いや、マルチーズを触ろうとしていたのがおばさんでさ・・・・」
「・・・・この犬咬むよって言って立ち去った」

最悪っ! 最悪だっ


その後おじさんも、マルチーズも見かけなくなりましたが、
アーケードで見かけた方はお気をつけください。

おじさんごとで、すいません。





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